6月末から日本に来ている。今回は、「赤毛のアン100周年」関連の仕事で来日したのだが、非常に苦戦しているプロジェクトがあり、このところ精神的にも参っていた。告白してしまうが、生まれて初めて「赤毛のアン」関係から全て逃れたいと思った。でも、不思議なことが起こったりして、どうにか踏ん張ることができている。
不思議なこととは、東野圭吾さんの「分身」と出会ったこと。カナダでいつも活字中毒に陥っている私は、日本に帰国すると必ず本屋で大量に文庫本を買い込む。今回は、仕事が辛いのも手伝って、とにかく読書に没頭したかった。日常を忘れて本の世界に逃げ込みたかったのだ。そんな中で「分身」を読み始めた。
皆さんは、この本で「赤毛のアン」が多く語られることを知っているだろうか。私は知らなかった。ただ本屋で目に付いたから買ったのであって、まさか、主人公のバイブルとしている本が「赤毛のアン」だとは、しかもこんなに蜜に出てくるなんて思ってもいなかった。
小説を読み進むうちに、ストーリーを楽しみながら、自分が今この本を読んでいる意味も考えていることに気がついた。現実逃避のつもりで逃げ込んだ世界で、私は忘れようとした「赤毛のアン」とまた出会ってしまったのだ。それは、全くの偶然だったかもしれない。でも、私は偶然よりも必然を感じた。離れようとしている私を、何かが引きとめようとしている。そんな不思議な力を感じたのだ。これもアンとの縁なのだろうか。そうであれば、今の仕事を失敗しても最後までやってみようと、思うことができた。
来年、どのように100周年を迎えているか、まだ先は見えないが、この縁だけは大事に忘れないでおこうと思う。
このようなことがあって少し気持ちが上向きになった先週、「赤毛のアンが読者アンケートで1位になってるよ」と、取り引き先の人が教えてくれた。早速記事が掲載されている雑誌を買ってみた。「日経WOMAN」の8月号だ。
特集記事は「20代・30代で読んでおきたい1冊が見つかる~人生を変える最高の本」というタイトルで、著名人にお気に入りの10冊を挙げてもらったり、働く女性にお勧めの本を特集したりしていて、本好きの私にとっても非常に興味深い内容になっている。その中で、「私のバイブル本」と称して読者837人にアンケートを行っていた。好きな作家ベスト10、恋愛に効いた本、ここ1年で読み最も良かった本、など8部門に分けてアンケート調査をし、「赤毛のアン」は「自分史上最高のバイブル本」部門で見事第一位を射止めていた。昨年末から今年初めに行った「サンケイリビング・えるこみ」というサイトの読書アンケートでも「赤毛のアン」は2部門に渡って4位に入るという快挙を成し遂げている。今度は第一位。本当に根強い人気だ。
更に嬉しかったのは、アンケート対象者の平均年齢が31歳ということ。この頃読書人口が減少し、それに伴って「赤毛のアン」のファン層も40~70代へと熟年化傾向にあるという話を耳にしていた。プリンス・エドワード島への旅行のターゲットも自然と年齢層を上げる戦略になってきていたが、「日経WOMAN」の平均年齢は、その定評を覆すものだった。
また同じ特集内で、大人の感想文コンクールもやっており、「赤毛のアン」について書いた感想文がグランプリを受賞していた。バイブル本に続いてのダブル受賞だ。しかも感想文を書いたのは20代の女性。これで十分に、日本の若い世代にも「赤毛のアン」は感動を与え続けていることを、再認識することができたと思う。アンなんてもう古い、とか、ファンの年齢は上がっているとか、ここしばらく聞かされていたことは何だったのだろう。「アンは永遠に不滅です」と誇らしく宣言したくなってしまう。
この「日経WOMAN」のアンケート結果も、壁にぶち当たり続きの最近の私にとって、前に進む勇気を与えてくれるものとなった。
当初は3週間の出張予定が、延びに延びて、日本滞在もひと月以上になりそうだ。2008年が近づくにつれて、100周年に関する問い合わせやタイアップの相談も増えている。次から次へと埋まってゆくスケジュールに押されて、なかなかカナダに戻ることができなくなってしまった。まあ、どうせ延びるなら、滞在中、もっとたくさん前向きなことが起こって欲しいと願っている。
それにしても、東野圭吾さんは「赤毛のアン」のファンなのだろうか。少なくとも読んでいると確信する。なぜ、あのように自分の小説に登場させたのか、いつか機会があったら聞いてみたい。
=「赤毛のアン」出版100周年の2008年まであと24週=
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