カナダの住所は、州の名前を全部表記せずに、省略して書くことが多い。例えば、バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州(British Columbia)は「BC」と略されるし、トロントのあるオンタリオ州(Ontario)は「ON」と略される。
プリンス・エドワード島州は何と書かれるかというと、Prince Edward Islandの略で「PEI」もしくは「PE」である。州の省略文字は大抵2文字であるが、プリンス・エドワード島州の場合、「PE」よりも「PEI」と3文字で表記される方が多いようだ。「PE」だと肝心の部分の「Island」が抜けているので、心情的に「I」を付けてしまうのだと思う。
そんな私も、プリンス・エドワード島へ郵便物を出す時は、「PE」でいいとは思うのだが、いつも「PEI」と書く。
実は、「PEI」という呼び名は、プリンス・エドワード島の愛称でもある。住所表記だけに使われる言葉ではないのである。カナダ国内、島の人もそうでない人も、島のことを「PEI」と呼ぶ。「プリンス・エドワード・アイランド」と言うよりも「ピー・イー・アイ」と言った方が短いし言いやすいからだろう。
「I’m from PEI.(私は、PEIの出身です)」
「I am planning to go to PEI.(PEIに行くことを計画しています)」
というように、かなりの頻度で使われている愛称なのである。
私は、あまりこの呼び方が好きではない。嫌いというわけではないが、できれば、プリンス・エドワード・アイランドと全部言いたいし、他人にも言って欲しい。なぜなら、プリンス・エドワード・アイランドと言った方が、私には、格調高く聞こえてとても特別な島のような気がするからだ。それに対して、PEIと言うと、なんだか一挙にその格調が下がってしまって、どこにでもあるありふれた島という気がしてしまうのだ。
それに私は、カナダ人が「Prince Edward Island」と発音するのが好きなのである。「Prince」と「Edward」という単語には、日本人が最も苦手とする「r」の発音が含まれている。そのr音が見事に発せられると、なんとも優美に聞こえるのである。それは悲しいかな、日本人の私には、逆立ちしても到底できない発音なのだ。
島でガイド会社に勤めているころ、電話を取るときに、毎回「Good morning (Good afternoon), Prince Edward Tours」と言って出なければいけなかった。いつも「プリンス・エドワード」が上手く発音できなくて、私は四苦八苦したものだ。時々「What’s?」と相手に聞き返されたりして、何度も発音してやっと分かってもらうこともあった。
今では、少しましになったとは思うが、それでも、カナダ人のようには言えない。完璧に発音される「Prince Edward」という甘美な響きに、いつもうっとりと聞きほれてしまうのだ。
あまり好きではない、と言うくせに、私は、仕事や会話の時には「PEI」を使っている。やはり、完璧には「プリンス・エドワード・アイランド」と発音できないからだ。言葉に詰まると困るし、それに馬鹿にされたくない、というどうしようもないコンプレックスもある。
たわいもない夢かもしれないが、いつか、カナダ人のような美しい発音で「プリンス・エドワード・アイランド」と言ってみたいものである。
(写真はいずれもプリンス・エドワー島州観光局提供)
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