今日も世帯主の声が響く。その後にはトラちゃんのコメントも続く。「ねぇ〜!」。ノドカ本人は「キュルルル!」と猛スピードダッシュであさっての方向に消えていく……って様子を僕ヒロノシンは猫ベッドに寝そべりながら横目で見てる。
一応、末っ子の殻を破って「お姉さん」に成長したはずのノドカなんだけど、でも、野性児ぶりは相変わらず。最近は専用の爪とぎマットじゃ飽き足らないらしく、編んだ竹籠のゴミ箱や、リビングの椅子、ソファカバーなんかでバリバリバリバリ!とやることが増えてきた。で、そのたび世帯主に「ノンノン!」とやられてるんだよね。もちろん、トラちゃんの「ねぇ〜!」っておまけつきだ。
傍目には、いたずらっ子って感じなんだけど、ところがノドカの場合は違う。本人にいわせると「いたずらじゃなくて、やりたいからやってるだけ」って感じだと思う。なぜって、とにかく、ノドカは何事も深くものごとを考えてないからね。(写真はつい最近のノドカ) それに比べて、トラちゃんの「ねぇ〜!」。正確にいうと、「(もう、ノンノンってば)困っちゃうねぇ〜!」なんだ。
生まれたばかりのトラちゃんがわが家にやってきたとき、ノドカはびびりまくって、いつも背を低くして、はいつくばるように歩いていた。で、トラちゃんが泣こうものなら、ビックリ仰天してドドドドド〜!!と走って逃げていっていた。でも、すぐに慣れた。で、昔ながらのカーテンよじのぼりをやろうとしたり、ひとり運動会をしたり、やんちゃぶりは全く変わらなかった。
だから、世帯主は赤ん坊のトラちゃんを抱っこしたまま「これ、ノンノン!」とやらなくてはならなかったわけなんだよね。で、世帯主が大きな声を出すたび、赤ちゃんだったトラちゃんは目を丸くして驚いていたんだ。
理由もなく驚かせては可哀想と思った世帯主は、「ノンノン!」と言った後、トラちゃんの目を見て「ほら、ノンノンがいたずらしてたんだよ」「困っちゃうねぇ〜」と必ずトラちゃんに話しかけるようにした。すると、生まれて数カ月だったけれど、トラちゃんはすぐに事情を察知したみたいだった。
もちろん、正真正銘の赤ん坊だから理屈で分かってたわけじゃない。でも、肌で分かるっていうのか、何が起こっているのか確実に感じ取っているようだった。生まれてすぐに僕らと暮らし始めたトラちゃんは、本当にかなり早い段階から、僕らを一緒に暮らす家族として認識してたんだよね。
だから1歳になってしばらくして少しずつ話し始めたとき、「ねぇ〜!」も当たり前のように話すようになった。歌が大好きで、人の歌に上手に間の手を入れるトラちゃんだから、似た間隔で覚えちゃったのかもね。今じゃ世帯主が見てないときにノンノンがいたずらしても、ひとりで「ねぇ〜!」って言ってるよ。世帯主の真似をして「ノンノンいけましぇん!」「だめよ」「ねぇ〜!」と、一人二役をやっているときもある。
え、そういうときのノドカの反応? トラちゃんに叱られても、「キュルル〜!」と声をあげ、ダダダダダ〜!と走っていってしまう。ビッグサイズとはいえ、まだ1歳のトラちゃんを相手にそうこわがる必要もないと思うんだけど、深く物事を考えないノドカのことだから、勢いよく「ノンノン!」と名前を呼ばれると、条件反射でそうなっちゃうみたいなんだよね。やれやれ。
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以上は某ブログで2005年7月14日にリリースしたコラムのアーカイブです。
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<今日の筆者>いとう・ひろのしん(下の黒猫)
雑種。1998年夏、大阪箕面市生まれ。かに座(推定)。きれい好きで、お人(猫)好し。忍耐強さと面倒見の良さには定評あり。得意技は洗濯機もぐり。しずか&のどかという血縁関係のないスコティッシュ・フォールド種の姉妹猫と同棲。飼い主は麻布小寅堂店主。
いとう・しずか
スコティッシュ・フォールド種。1999年大阪豊中市生まれ。しし座。得意技はラッコ寝と、後ろ足投げだしほふく前進。近所の動物病院では「スコティーのシズカちゃん」として人気。2歳年下の妹ノドカと、ヒロノシンという黒い雑種の雄ネコと同棲。飼い主は麻布小寅堂店主。
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