「にょんにょ〜ん!ぉいてきなしゃ〜!ぉあんよぉ!」。まもなく1歳5カ月になるトラちゃんが両手を腰にあて、整理ダンスの上を見上げながら今日も叫んでる。
まだ舌足らずなトラちゃんの言葉を私シズカが通訳すると、「ノンノ〜ン!降りてきなさ〜い!ごはんよ〜!」。トラちゃんが見上げる先には私の妹ノドカ。たいてい青いベッドの上で正座しながらトラちゃんの言葉に耳を傾けてる。しびれを切らしたトラちゃんは、次に斜めに手を挙げてカモンの仕草をしながら「ぉいでっ!、ぉいでっ!」。でもノドカは固まっちゃって降りて行こうとはしない。
「仕方ないねぇ〜」
そこで登場するのが世帯主。まずノドカを抱き下ろして右手で、トラちゃんを左脇に抱えて台所に向かう。そこでは既に私とヒロノシンがごはんをバクバク食べているのだった。
トラちゃんは私たちが食事風景を見学するのが大好き。私たちのご飯皿は台所にあって、トラちゃんはいつも入り口から首をのばして私たちが一生懸命食べるのを熱心にのぞきこんでる。それがお決まりのパターンなの。で、食いしん坊な私や敏捷なヒロノシンはトラちゃんが入り口にいたってスルリと脇を通ってご飯皿に向かうんだけど、気の小さいノドカはトラちゃんが先に台所の入り口に陣取っていたりすると、ごはんの時間になってもなかなか台所にこようとしないのよね。
でもね、いつもいつも正座で固まってるわけじゃない。今日みたいに余裕で見下ろしているときもあるし(写真)、フェイントかけてトラちゃんの真横をすり抜けて行く事もある。やっぱりお腹の空き具合が一番の問題なのよね。
それに確かにトラちゃんは苦手だけど、末っ子でマイペースの野性児なノドカは、みんなが思うほどトラちゃんを恐れているわけじゃない。むしろ体温が高めでいつも温々としてるトラちゃんだから、熟睡しきったトラちゃんの上に乗っかって寝ようとしたり、横向いて寝てるトラちゃんの背中にくっついて寝そべったりしていることもあるくらい。
え、じゃあ、なんでノドカの耳がこの冬きれいに折れないで立ち気味なのかって?それはね〜。
本当の理由をいうと、やっぱりトラちゃんが大きな理由の一つなのだった。
トラちゃんが生まれたおかげで世帯主はこの1年半ほど産休&育休をとって毎日私たちと家にいた。だから真冬でもいつもわが家は適度に暖房がきいてたのよね。働いていたときは毎日仕事に出かけてたから、夜に世帯主かシッターさんが戻るまでは暖房なしで乗り切らなくちゃならなかった。ソファにはあったかほかほかのフリースを敷いてもらってるし、猫ベッドだってあるし、ヒロノシンやノドカと集まって3匹一緒に寝ることもあるからもちろん我慢はできる。けど、やっぱり冷え込む日はしんしんと冷えるから、体の中の熱が必要以上に逃げないよう冬の間はしっかり耳が折れてお団子顔になるのが常だった。
だけど、去シーズンと今シーズンはその必要がなかったってわけ。ちなみに夏はその逆で無駄な熱を溜め込まないよう私たちの耳はピン!と立つんだけど、同じ理由でやっぱり冷房がいい具合に効いていたから夏の立ち具合が緩やかだった。
というわけで、今や体格はもちろん精神的にもトラちゃんに追い越されつつあるノドカなんだけど、そんなことより、私には気に懸かっていることがある。それは世帯主の職場復帰。4月から仕事に戻る予定なんだけど、となると、トラちゃんも保育園に通い出すわけだから、また日中は私たち3匹だけでお留守番をすることになる。またエアコンや暖房なしの環境でお留守番しなきゃならないんだもの、この夏なんか猛暑になったりしたら大変かも。
ところがノー天気で正真正銘「末っ子」気質のノドカは何にも考えていないみたいで、家の中をバタバタドタバタ走り回ったり、ゴミ箱でいたずらをしたりするたび、「にょんにょん!ぃぇませんっ(いけません)!」とトラちゃんにお説教されてる始末。これからもますます「末っ子道」を究めていくことになりそうな気配で、ヒロノシンだったらこう言うのかも。やれやれ、って。
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以上は某ブログで2005年3月5日にリリースしたコラムのアーカイブです。
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<今日の筆者>いとう・しずか
スコティッシュ・フォールド種。1999年大阪豊中市生まれ。しし座。得意技はラッコ寝と、後ろ足投げだしほふく前進。近所の動物病院では「スコティーのシズカちゃん」として人気。2歳年下の妹「のどか」と、「ひろのしん」という黒い雑種の雄ネコと同棲。飼い主は麻布小寅堂店主。
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