「今日はだれの仕業なの?」。仕事から帰った世帯主がリビングに立ちつくすと、私シズカは傍らに寄り添い正座する。でもねー、仲間を売ることになるから、犯人を教えることはできないの。代わりに現場を一緒にみつめてあげるのよね。
うちの家は私たちが歩きやすいよう、リビング、洋間とフローリングの部屋には絨毯が敷いてある。リビングに使っているのはパネルカーペット。1区画40センチ四方のもので、ヒロノシンが時々げろよんして汚しても、そこだけはずして洗えばOKだから重宝されてるの。
それが時々、ところどころはがされて床がのぞいていることがある。裏返されたカーペットは少し離れたところにゴロリと転がってる。朝世帯主が目覚めたとき、仕事から帰ったとき、おふろやトイレに入っている間にやられてることもある。
裏には滑り止めのシールがはってあるから、世帯主にだってはがすのは一苦労。それを軽々と持ち上げるわけだから、相当な力の持ち主……。というわけで、容疑者はあがっていたけど、現場を押さえることはなかなかできなかったの。
ところが、ある日……。ノドカがリビングの絨毯で爪とぎをしようとしたときだった。世帯主が「ノンちゃん、だめだめ!」と声をかけたら、ノドカは動転したのか、慌てて両前足を上げた。すると、うまく爪がはずせなかったのか、カパ!という音とともにカーペットを軽々と持ち上げちゃった。
黄色い目が真ん丸に見開かれてたから、ノドカ本人も驚いていたらしかった。カーペットを持ち上げた姿は、まるで重量挙げの選手みたい。もともとノドカはグレーのマスクにレスリングのユニホームを着たみたいな柄をしてるから、不思議と様になってたの。
その姿に世帯主も思わずプッと噴き出した。それで味をしめたのか、カーペットがはがされる回数が増えちゃった。世帯主がノドカを抱き上げようとしたら、カーペットまでくっついてくることもある。ただのおてんばじゃなくて、世帯主を驚かせて喜ぶ知能犯敵なところがノドカにはあるのよね。
でも、ノドカがカーペットはずしを楽しむ以前にも時々はずれてたってことは……。と思っていたら、先週末、とうとうヒロノシンが現場を押さえられちゃった。事情があって私とヒロノシンは前足の爪がない。なのに、ヒロノシンはとっても器用なもんだから、上手にはがしちゃうの。
まず、リビングじゅうの床を注意深くチェックする。ほんの少しだけ浮き上がったカーペットを見つけたら、あとは実行あるのみ。手首のスナップをきかせ、チョチョチョ、チョチョチョ、と根気よく少しずつ浮かしていき、最後にバリ!ととどめを刺すってわけ。
その犯行現場をそっと見守っていた世帯主は感心。目が輝いていたから、年末の大掃除にヒロノシンとノドカの人(?)材活用を狙ってるのよね。そんなにうまくいかないと私は思うけど……。みなさん、どう思います?
(のどかの写真はリリース当時のもの、ひろのしんと私しずかの写真はこの春のものです。)
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以上は某ブログで2005年3月5日にリリースしたコラムのアーカイブです。
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<今日の筆者>いとう・しずか
スコティッシュ・フォールド種。1999年大阪豊中市生まれ。しし座。得意技はラッコ寝と、後ろ足投げだしほふく前進。近所の動物病院では「スコティーのシズカちゃん」として人気。2歳年下の妹「のどか」と、「ひろのしん」という黒い雑種の雄ネコと同棲。飼い主は麻布小寅堂店主。
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