「んるるるる〜っ!」。シズカが台所に走っていく。お次は「きゅるるるる〜っ!」と、ノドカ。その後ろから、ボサボサ頭の世帯主がふらふらとついていく。最後に「ヒロノシンもおいで、ごはんだよ」と、僕が呼ばれる。わが家の朝の恒例行事だ。
猫にも朝型と夜型があって、シズカは朝型なんだ。毎朝6時過ぎにはお腹がすくらしく、世帯主を起こしてごはんをねだる。先月からそこにノドカも加わった。
ベッドの枕元に正座して、チョイチョイ、と前足で寝ている世帯主の顔をくすぐる。反応がないとポンポン、と軽くたたく。それでもだめなら、グッ、グッ、と体重をかけて押す。それを繰り返して起こすんだ。
何時に寝ようと毎朝ほぼ定時にやられるわけだから、世帯主も大変だ。上半身を起こしたところでまた倒れ込んだり、途中で行き倒れて寝ちゃったりしても、シズカは許してくれない。仕方なく起きあがるんだけど、遊び好きなノドカがまとわりつかれて、バランスくずして転ぶこともある。
困っているのは僕も同じ。なぜなら世帯主と一緒で夜型だから。本当はのんびり眠っていたいのに、一緒に起こされるんだもん。僕だけ遅いご飯にすると、彼女たちがまた食べたがるし、二度手間になるから、やむなく一緒にしてるんだ。
暖かい季節はいいけど、低血圧なのか冬はさらに目覚めが悪い。世帯主がお皿の前まで抱いてってくれても、そのままぼーっとしてたり、居眠りしたりすることもある。油断すると横取りされるから、食べ終わるまで世帯主に横で見張っててもらわなくちゃならない。
ごはんが終わると、僕と世帯主は再びベッドへ。もう毎日のことだから、世帯主は無意識にごはんの用意をしているらしい。本格的に起き出してから、「今日はご飯あげたんだっけ?」なんて言ってることもある。
すると、ちゃっかり者シズカはもらってないような顔をして、もう一度ねだったりするんだよね。すぐにばれて、「あんまり食べ過ぎるのは体によくないの」って言われながらも、小さな煮干しをゲットする。育ち盛りのノドカも一緒。うちに来たとき=写真=に比べると、ずいぶん大きくなったよ。
夜もしっかり食べて、柔道部の練習も終わると、朝型のおふたりは、そうそうに寝てしまう。ところが問題なのは寝相。あちこちで、ふにゃふにゃの縫いぐるみみたいに脱力しきって熟睡するんだ。床で死体みたいに眠ってるかと思えば、世帯主の膝の上でのびきってることもある。
「大変、地震!」「ゴジラが来た!」なんて言って揺り動かしても、されるがまま。ピクリともしない。「夜寝てるときに敵に襲われたり、本当に地震が来たらどうするの?」って、時々お説教されてるけど、ま、僕も朝襲われたら困っちゃうな。
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以上は2001年5月24日リリースの我が家のお話でした。
でも、子どもの時ののどかの写真以外は今朝の僕とのどかです。のどかなんて、育ち盛りをすぎてもむしゃむしゃよく食べるもんだから、むちむちパッツンパッツンのお腹になってるよ。やれやれ。
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<今日の筆者>いとう・ひろのしん(下の黒猫)
雑種。1998年夏、大阪箕面市生まれ。かに座(推定)。きれい好きで、お人(猫)好し。忍耐強さと面倒見の良さには定評あり。得意技は洗濯機もぐり。しずか&のどかという血縁関係のないスコティッシュ・フォールド種の姉妹猫と同棲。飼い主は麻布小寅堂店主。
いとう・しずか
スコティッシュ・フォールド種。1999年大阪豊中市生まれ。しし座。得意技はラッコ寝と、後ろ足投げだしほふく前進。近所の動物病院では「スコティーのシズカちゃん」として人気。2歳年下の妹ノドカと、ヒロノシンという黒い雑種の雄ネコと同棲。飼い主は麻布小寅堂店主。
★このコラムは某ウェブサイトで2000年1月〜01年9月まで続いた連載コラム「21C(世紀)の猫」のアーカイブです。現在の家族模様を織り込みながら、キャッ!といってしまいそうな楽しい話題をお届けします。
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