「のんちゃん、そこはダメダメ」。世帯主がノドカを抱えて走ってくのを、よくやるなーって思いながら、私シズカは今日も見送る。すると豪快でリズミカルな音が聞こえてくる。バリバリバリバリ……。
3回目の育児で世帯主は初めてあることに挑戦している。それは「爪とぎ指導」。事情があって、ヒロノシンと私は前足の爪がないんだけれど、ノドカの前足には爪がある。それで、世帯主は爪とぎ場をいくつか設けて、爪とぎはそこでするよう教えてるの。
絨毯の隅とか、お風呂マット、ゴミ箱代わりに使っている大きな竹かご……。放っておくと好きなところでとごうとする。それを見つけるたび、世帯主は爪とぎ場に連れていき、自ら爪とぎのお手本をして見せる。
で、ノドカがちゃんとできると、頭をなでなで優しく褒めるのよね。爪とぎ指導をするときの世帯主は決して怒らない。なぜならノドカは大目玉をくらうと、萎縮しちゃうからなの。
うちでは私たちは台所に上っちゃいけないと教えられている。それを知らずに、高い所に跳べるようになったノドカが上ってしまったときのこと。初めが肝心と思った世帯主は迫力ある声で怒った。「こらっ!」
私やヒロノシンなら、腰を低くしてさっさと退散して2度とやらない(世帯主の前では)。ところが、ノドカはフリーズしちゃって、うずくまったまま動けなくなってしまった。それで世帯主は、私やヒロノシンと同じようにしつけるのは無理だと思ったらしい。
昔の偉い人も「人を見て法を説け」って言ってるし、マラソンの高橋尚子選手のように褒められていい結果を出すキャラクターもいる。それで根気よく教えることに決めたのだった。
甲斐あって、ノドカも次第にきちんとルールを守れるようになった。やりたいと思ったときにすぐできるよう、ノドカの爪とぎ場は5カ所ある。正確には、5つの爪とぎ道具を持ってるっていう方がいいのかな。それを家の中の適当なところに置いてるの。
ボーナスで買った絨毯の端切れ、ペット用品店で買った木や麻布で作った爪とぎブロック……、そこに先週、新しいのが加わった。犬の顔の形をしたマットタイプのものが2枚。和室と洗面所に置いてあるんだけど、それがノドカの最近のお気に入り。
通りがかると必ずバリバリやってるし、そのままそこで寝そべって眠ることもあるくらい(上の写真写真)。心なしかノドカの顔に似てるように見えるんだけど、それで親近感がわくから……なんて考えすぎかな?
ノドカがあんまり楽しそうにやってるもんだから、最近はついつい、私も爪とぎグッズに手を出してしまう(下の写真)。実はヒロノシンも虎視眈々と狙ってるのよね。
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<今日の筆者>いとう・しずか
スコティッシュ・フォールド種。1999年大阪豊中市生まれ。しし座。得意技はラッコ寝と、後ろ足投げだしほふく前進。近所の動物病院では「スコティーのシズカちゃん」として人気。2歳年下の妹ノドカと、ヒロノシンという黒い雑種の雄ネコと同棲。飼い主は麻布小寅堂店主。
いとう・ひろのしん
雑種。1998年夏、大阪箕面市生まれ。かに座(推定)。きれい好きで、お人(猫)好し。忍耐強さと面倒見の良さには定評あり。得意技は洗濯機もぐり。しずか&のどかという血縁関係のないスコティッシュ・フォールド種の姉妹猫と同棲。飼い主は麻布小寅堂店主。
★このコラムは某ウェブサイトで2000年1月〜01年9月まで続いた連載コラム「21C(世紀)の猫」のアーカイブです。現在の家族模様を織り込みながら、キャッ!といってしまいそうな楽しい話題をお届けします。
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